今回は「マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応」に関する部分から第9条に追加された箇所を具体的に説明していきます。
(緊急時の業務)
【赤線部分が追記箇所で、前条の追加により条文番号が一つずれています。】
第9条 乙は、第3条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる災害又は事故等の事由により、甲のために、緊急に行う必要がある業務で、甲の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、甲の承認を受けないで実施することができる。
この場合において、乙は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を甲に通知しなければならない。
一 地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられ等
二 火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪、
孤立死(孤独死)等
(改訂箇所の解説)
国土交通省の2023年度マンション総合調査結果によると、マンションの世帯主の年齢構成は、70歳以上の割合が25.9%と前回調査より3.7%増加しています。
築年数が多いマンションほど高齢化が顕著で、1984年築以前のマンションでは70歳以上の住人が55.9%と過半数を占めています。それに伴い孤独死の件数も増加傾向にあります。独居世帯での孤立死を発見するきっかけとなる「最近姿を見かけない」「新聞がたまっている」「異臭がする」などの異変に、管理員が最初に気が付く例が多くありその件数は全体の約4割というデータもあります。
専有部分は原則として組合員が管理することになっていますが、当該専有部分の組合員の同意の取得が困難な場合には、警察等から管理業者に対し、緊急連絡先の照会等の協力を求められることがあります。
管理会社の中には対応マニュアルを作成し、一般公開しているところもあります。
ただ、管理会社だけの力では限界がありますので管理組合が主体となって連携して対応することが必要となります。具体的には以下の対策が考えられます。
・標準管理規約(必要箇所への立ち入り)第23条4項の規定を規約に盛り込む
・福祉担当理事を決める
・組合員名簿居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行う
・組合員同士が交流を図れるイベントを企画するなど良好なコミュニティ形成に努める
特に名簿の整備については、2022年から国が実施している「管理計画認定制度」の認定基準の一つであり、平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うためにも必要な事項です。
管理組合は少なくとも年に1回総会を開催しているため、議案書の配付に併せて「組合員や居住者に変更があった場合は、出欠票の提出と併せてご報告下さい」と呼びかけ、常に最新の居住者情報を入手できるような仕組みを作っても宜しいかと思います。
関連して、認知症の居住者の割合も増えていますが、東京都では昨年度から
認知症対応としてマンション管理士を派遣し訪問説明をする事業を行っています。
また、当機構では管理会社との調整、規約改正、名簿の作成等、多数の業務実績を有しておりますので、お気軽にご相談ください。
マンション管理士 長濱 千奈美