【お役立ちコーナー】労災・事故対応に向けた専有部分の貸与の規定

このコーナーでは、標準管理規約や標準管理委託契約の改正内容について、何故改正したのか説明していきます。第1回目は標準管理規約(2024/6改正版)第19条の巻です。

【改正前】
(専有部分の貸与)
第19条 区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、その貸与に係る契約にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

【改正後】
3(追加項目)第1項の場合において、区分所有者は、当該第三者に、専有部分を借用した旨の届出を管理組合に提出させなければならない。

 

(改正箇所の解説)
マンションを所有している人がそのマンションを一旦賃貸に出すと、その賃貸契約が終了したら次の賃借人に入ってもらう、それも終了したらまた次の賃借人に、という具合に居住者(占有者)が次々に代わっていき、周りの居住者からは、この部屋は今何方が住んでいるのか誰も知らない、といった状態になることも考えられます。

すると万一地震や火災が発生した場合に、周囲からはこの部屋の住人について安否確認ができない、そもそも安否確認が必要なのかもわからないといった事態や、一方で当の住人が病気やケガで身動きが取れないような状況に陥っても、助けも呼べない、果ては生死に関わって、最悪の場合孤独死状態で発見される、といった事態も想定されます。

国交省が公表した「マンション標準管理規約」によれば、この追加項目について「第3項の届出事項は、第三者本人の氏名、対象住戸、電話番号のほか、緊急時の連絡先となる者の氏名及び電話番号等が考えられる。加えて、区分所有者から専有部分を借用した第三者と、現に専有部分に居住する者が異なる場合は、現に専有部分に居住する者に関する情報も把握することが望ましい。」とコメントしています。

ポイントは、いままで標準規約にはなかった「緊急時の連絡先となる者の氏名及び電話番号」の届出も想定しているという点で、やはり、国としては「災害対策の担い手としての管理組合」に注目しているような気がします。

つまりこのようなマンション内で必要な時に自助共助、あるいは公も巻き込んだ公助によって、お互いに安心して暮らせるように、居住者名簿を整理保管しましょうというのがこの改正の主旨なのです。

この件については個人情報保護の観点も見逃してはならないため、届出を受けた管理組合がどのような目的でこの名簿を利用し、そのために居住者情報を届出にどこまで開示頂き、且つ通常時には誰がどのように保管管理するのか(管理会社で保管するのでは緊急対応時に適さない)等、充分にみなさんで話し合って決めて進めていくことが最も大事なポイントになります。

当職らは、これまで培った実務経験をもとに、名簿の取扱い、届出事項の策定、及び個人情報の保管管理等について、より実態に即した規約細則の見直し・作成のご提案が可能です。

規約細則の見直しでお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談下さい。

*次回は管理組合員の届出義務について説明致します。

 

さいとうたけろうマンション管理士事務所
齋藤太桂朗