このコーナーでは、標準管理規約や標準管理委託契約の改正内容について、何故改正したのか説明していきます。
2025年4月は標準管理規約(2024/6改正版)第60条の巻です。
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◎管理費等の滞納者が一部返済に際し、都合の良い返済項目を指定してくるなんて許せない!
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【改正前】
(管理費等の徴収)
第60条 管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から口座振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は別に定める徴収日までに一括して徴収する。ただし、臨時に要する費用として特別に徴収する場合には、別に定めるところによる。
2 組合員が前項の期日までに納入すべき金額を納入しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利〇%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用等並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。
3 管理組合は、納入すべき金額を納入しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講ずるものとする。
4 理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
5 第2項に基づき請求した遅延損害金、弁護士費用等並びに督促及び徴収の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。
6 組合員は、納入した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。
【改正後】
第60条第5項(新設項目、以下項番がひとつずつずれる)
収納金が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、管理組合は、理事会の決議により定める返済の充当の順序に従い、その弁済を充当することができる。
(改正箇所の解説)
管理費等の滞納者の滞納額が長期に亘り膨大な金額になりつつある場合(あってはならないことですが実際には頻繁にみられるようです)には、弁護士に依頼して回収を図ることになります。すると元本の他に、弁護士費用や遅延損害金等も発生するため、滞納者へ併せて請求することができます(第60条第2項のとおり)。
例えば滞納総額が100万円で、内訳が管理費等の元本60万円、弁護士費用30万円、遅延損害金10万円のケースで、滞納者が60万円だけ支払ってきた場合とします。ここで管理規約に取決めがない場合には民法が適用され、滞納者が一番有利なものに引当ることを指定できてしまいます。即ち「元本60万円に引当てて下さい。残りの弁護士費用と遅延損害金はあとから支払います。」との言い分がとおってしまい、請求残額40万円についてさらに滞納され、元本滞納はゼロ、といった事態も想定されることになります。
改正規約ではこのような事態を避けるべく、管理組合が何口もある返済項目について順序を指定できる旨を定めました。管理組合にとって有利な引当て順序は、遅延損害金⇒弁護士費用⇒元本となるので、上記のケースでは遅延損害金と弁護士費用40万円+元本20万円に充当する旨を、理事会で決議して滞納者に通知すれば足りることになります。
当機構では管理費等の滞納問題に精通している弁護士との接点も有しています。お困りの際には声がけ頂ければ幸いです。
さいとうたけろうマンション管理士事務所
齋藤太桂朗